チューリップ微斑モザイク症状に特異的な因子と粒子の性状と血清学的診断法


[要約]
チューリップ微斑モザイク症状から特異的に分離される感染因子をC. quinoa上で増殖し、これから47Kのタンパク質を有する幅4〜8nmの複雑に屈曲したひも状のウイルス様粒子を純化した。さらに、本粒子に対する抗血清を作製して、血清学的診断法を確立した。
富山県農業技術センター・野菜花き試験場・球根類病害指定試験地
[連絡先]0763-32-2259 
[部会名]生産環境
[専門]作物病害  
[対象]花き類
[分類]指 導 

[背景・ねらい]
県内で発生し問題となっているウイルス様症状の病原は長らく不明である。そこで,ウイルス様症状の1つである微斑モザイク症状について,ウイルス様粒子を純化し,抗血清を作製して血清学的な診断方法を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. @微斑モザイク症状の感染株から特異的に分離される感染因子の耐保存性は1〜2時間(20℃),耐熱性は40〜45℃(10分間),耐希釈性は100〜500倍であり,不安定な種類のウイルスと考えられる。
  2. A粗汁液に活性炭素や2-メルカプトエタノールなどを添加することによって耐保存性が向上し,C. quinoa上での増殖・継代が容易となる。
  3. Bチューリップ病葉およびC. quinoa,ホウレンソウ,ツルナなどの接種葉から,健全葉には見られない幅が4〜8nmの複雑に屈曲したひも状のウイルス様粒子が検出される(図1)
  4. CC. quinoa 感染葉から純化したウイルス様粒子のタンパク質分子量は47Kであり,本粒子を抗原に作製した抗血清を用いて行ったWestern blot解析によって,発病株から特異的に47Kタンパク質が検出される。
  5. D部分純化試料の感染性は,抗ウイルス様粒子IgG,RNase A, Proteinase KやSDSの処理によって失活し,抗健全成分IgGやDNase Iでは失活しない(表1)
  6. Eショ糖密度勾配遠心分離後に分取した分画の感染性は,複数の分画を混合することによって高まる。
  7. Fdas-ELISA法やTBIA法(図2)による診断法を確立したが,抗原は,茎,葉,花弁において垂直的に偏在して分布する(図3)ことから,TBIA法を用いて茎横断面から検出する方法が,精度の高い診断法であると考えられる。  以上の結果から,微斑モザイク症状は分節したゲノム(おそらくRNA)および47Kタンパク質を有する新しいグループに属するウイルスに起因する可能性が高い。

[成果の活用面・留意点]

  1. @血清学的な診断法が確立され,迅速な検出診断が可能となった。ただし,das-ELISA法で診断する場合は,磨砕用緩衝液に活性炭素を添加する必要があるc
  2. A塩化セシウム密度勾配遠心後の最終純化試料には感染性がないことから,本ウイルス様粒子がウイルスであることを完全には証明できていない。

  3. [その他]
    研究課題名:チューリップのウイルス病の発生機作の解明と防除法の開発
    予算区分 :指定試験
    研究期間 :平成8年度(平成6〜10年)
    発表論文等:Partial characterization of virus-like particles associated with tulip mild mottle mosaic,Ann.Phytopathol.Soc.Jpn.61巻6号,1995。 
    チューリップ微斑モザイク症状の感染特異的因子と粒子の諸性質、日植病報、61巻3号、1995。
    血清学的手法によるチューリップ微斑モザイク症状の診断、北陸病虫研報、43号、1995。
    
    目次へ戻る